感情表現が上手な人と苦手な人の特徴と育て方

あなたは、自分の気持ちをうまく言葉にできますか?
感情表現が得意な人は、良好な人間関係を築きやすく、職場でも信頼される傾向があります。一方で、感情を言葉にするのが苦手な人は、誤解を生んだりストレスを抱えやすくなります。

この記事では、感情表現が上手な人と苦手な人の違いを心理学の視点から解説し、素直に気持ちを伝える力を育てる方法について紹介します。

目次

感情表現が上手な人と苦手な人の違いとは?

1. 自己理解が深い(セルフアウェアネスが高い)

感情表現が上手な人は、まず「今自分がどんな気持ちか」を理解する力に長けています。これは心理学で「セルフアウェアネス(自己認識)」と呼ばれ、感情の元になった出来事や、自分の反応を客観的に見つめる力です。

例:
上司に注意されたときに「なんでこんなにムカついたんだろう?」と一度立ち止まり、「自分が否定されたように感じたからだ」と気づける人。

2. 言語化能力が高い(感情語彙が豊か)

気持ちを「言葉」にできる力も重要です。喜怒哀楽だけでなく、たとえば「戸惑い」「もどかしさ」「嫉妬」「誇らしさ」など、微細な感情を適切な言葉で表現できる人は、相手に自分の意図を正確に伝えることができます。

豆知識:
感情語彙が豊かな人ほど、精神的健康度が高いという研究もあります(Lisa Feldman Barrett博士の研究など)。

3. 相手の立場を考えながら表現できる

感情表現が上手な人は、自分の気持ちだけを押しつけるのではなく、**相手への配慮を忘れません。**相手の性格や状況を考え、傷つけずに伝える工夫ができるのです。

例:
「あなたの言葉でちょっと傷ついたよ」→
「たぶん悪気はなかったと思うけど、あの言い方で少しショックを受けたかも」

4. 非言語コミュニケーションが豊か

表情、声のトーン、ジェスチャーなど、言葉以外の手段でも感情を伝えるのが上手です。これにより、言葉と感情が一致し、誤解が生まれにくくなります。

例:
「ありがとう」と言う時に、自然な笑顔と柔らかい声で伝えられる人は、相手にしっかり感謝の気持ちが伝わります。

5. 感情を否定せず、受け入れている

怒りや悲しみといった“ネガティブな感情”も、自分の一部として受け入れています。無理に抑え込まず、「こう感じてもいいんだ」と認めることで、感情を健全に処理できます。

ポイント:
「怒ってはいけない」と感情を抑圧すると、爆発的な反動や心身の不調を招くことがあります。

まとめ:感情表現が上手な人とは?

  • 自分の感情を理解し
  • 適切な言葉と態度で伝え
  • 相手への思いやりも持てる人

このようなスキルは生まれつきではなく、意識的に訓練することで誰でも身につけることができます。

感情表現が苦手な人の特徴【詳しく解説】

1. 自分の感情がよくわからない(アレキシサイミア傾向)

「なんとなくモヤモヤする」「イライラするけど理由がわからない」など、自分の内面で起きている感情を認識しにくい傾向があります。これは「アレキシサイミア(失感情症)」と呼ばれ、現代人に意外と多い状態です。

心理学の補足:
アレキシサイミアの人は、感情と身体感覚を混同することもあり、「お腹が痛い」けれどそれが「不安」から来ていると気づけないことがあります。

2. 感情を抑えることが“正しい”と思っている

幼少期から「泣かないで」「怒るのはダメ」と言われて育った人は、感情を表に出すこと=悪いことという価値観を持っていることがあります。これが無意識のうちに感情の抑圧につながり、「言いたいけど言えない」状態を生みます。

例:
本当は悲しくて泣きたいのに、「弱音を吐くのはよくない」と思い込み、笑ってごまかしてしまう。

3. 周囲の評価を過剰に気にする(自己肯定感が低い)

「こんなことを言ったら嫌われるかも」「わがままだと思われたらどうしよう」といった不安が先に立ち、素直な気持ちを口に出せなくなります。他人軸で生きている人ほど、感情表現が難しくなる傾向があります。

参考:
自己肯定感が低い人ほど、他者からの承認に過度に依存し、自分の本音を抑えてしまうという研究結果もあります。

4. 語彙力・表現力の不足

「イライラする」「ヤバい」など、ざっくりした言葉しか使えない場合、感情を正確に伝えるのが難しくなります。感情表現には語彙力が不可欠です。単語が増えると、感情の輪郭も明確になります。

改善のヒント:
日常の中で「うれしい」→「誇らしい」「感激した」「ホッとした」など、ニュアンスの違いに注目する習慣をつけると良いでしょう。

5. 過去の経験から感情表現を避けている

「感情を出したら否定された」「泣いたらバカにされた」などの経験がトラウマになり、無意識に感情を閉じ込めるようになるケースもあります。これは防衛機制の一種で、自分を守るための無意識的な反応です。

例:
過去に怒りを表した際に「面倒くさい人」と扱われた経験があり、それ以来怒りを出せなくなった。

まとめ:感情表現が苦手になる背景とは?

感情表現が苦手な人には、

  • 自分の感情に気づけない
  • 表すことに「恐れ」や「恥」を感じる
  • 表現手段がわからない

といったさまざまな要因が絡んでいます。これは性格ではなく、経験や環境によって形成されたパターンです。だからこそ、トレーニングや意識づけによって十分改善することが可能です。

素直に気持ちを伝える力を育てる方法【詳しく解説】

1. 感情日記やエモーショントラッカーをつける

感情表現の第一歩は「自分の感情に気づくこと」。日々の出来事とそのときの気持ちを簡単に書き出すことで、感情のパターンが見えてきます。

おすすめの書き方例:

  • 今日あった出来事:会議で意見を言えなかった
  • 感じたこと:悔しい、モヤモヤ、不安
  • なぜそう感じたか:否定されるのが怖かった

📲便利ツール:
「Emolog」「Moodnotes」などの感情記録アプリも活用可能。

2. 「Iメッセージ」を使って伝える練習をする

相手を責めずに気持ちを伝えるには、「私は〇〇と感じた」というIメッセージが効果的です。感情を自分主体で表現することで、コミュニケーションが柔らかくなります。

例:
「なんで無視するの?」
「私は、話しかけたのに返事がなくて少し寂しく感じた」

ポイント:
「I feel(私は〜と感じる)」で始めると、自然に主観的な表現になります。

3. 感情語彙を増やすトレーニングをする

「嬉しい」「悲しい」だけでは表現の幅が狭くなります。より具体的な感情語彙を知ることで、微細な感情を正確に伝える力が育ちます。

おすすめワーク:
感情カードや「感情語リスト」を使って、日常の気持ちにラベルを貼る練習。

語彙例:

  • 怒り:イライラ、ムカムカ、侮辱された
  • 不安:ドキドキ、緊張、気まずい
  • 喜び:ワクワク、感激、安心

4. 身近な人との対話で練習する

信頼できる人と「気持ちを言葉にする練習」をするのも効果的です。最初は短くてもOK。「今日はちょっと落ち込んでる」と言えるだけで進歩です。

会話のきっかけフレーズ:

  • 「今日ちょっと感じたことがあるんだけど…」
  • 「この前のこと、少しモヤっとしてて話したくて」

👫身近な相手:家族、親友、信頼できる同僚など

5. 表情や声のトーンも意識する

言葉だけでなく、非言語的な表現(ノンバーバル)も感情伝達には大切です。笑顔、穏やかな声、アイコンタクトなどを意識することで、相手にも感情が伝わりやすくなります。

ポイント:

  • 表情と声のトーンが一致しているかチェック
  • 緊張して声が小さくなっていないか注意

6. 心理的安全性の高い環境をつくる

感情を出せるかどうかは「環境」にも大きく左右されます。否定やジャッジが少なく、自分の気持ちを安心して話せる相手・場を意識的に選ぶことが大切です。

例:

  • カウンセリング、グループセラピー、自己理解系のワークショップなど

まとめ:感情表現は「才能」ではなく「スキル」

感情表現が上手な人というと、「社交的な性格」「人付き合いが得意」といったイメージを持つかもしれません。しかし実際には、**感情をうまく伝える力は、生まれつきの才能ではなく“後天的に育てられるスキル”**です。

感情表現が苦手だと感じている人も、決して「自分はダメだ」と責める必要はありません。むしろ、多くの人が似たような悩みを抱えており、その原因は「訓練する機会がなかった」「うまく表現する方法を知らなかった」だけなのです。

今日からできる小さな一歩

まずは、次の3ステップを意識してみてください。

  1. 自分の気持ちに気づく
     →「いま、何を感じているんだろう?」と自問してみる。
  2. その気持ちを言葉にしてみる
     → 日記やメモに書き出す、簡単な単語でOK。
  3. 信頼できる相手に伝えてみる
     →「今日はちょっと疲れてるかも」と一言つぶやくだけでも◎

これを繰り返すことで、少しずつ「自分の感情を大切にしながら、相手にも伝える力」が育っていきます。

まとめ:自分を大切にするコミュニケーションとは?

それは、**「我慢しない」「無理に合わせない」「本音を置き去りにしない」**こと。

たとえば:

  • 相手の機嫌をうかがってばかりで、自分の気持ちを抑えない
  • 「嫌だな」と思うのに、笑ってごまかさない
  • 「いい人」であろうとして、本音を飲み込まない

自分の気持ちを尊重しながら人と関わること=自分を大切にするコミュニケーションです。

どうやって実践するの?

①「私はどう感じている?」を意識する

→ 会話の最中、何かモヤッとしたらスルーしない。
「今、私は何に違和感を感じている?」と自分に問いかける。

②「NO」を言える勇気を持つ

→ 無理なお願い、望まない誘いは断っていい。
「今は難しいです」「検討させてください」も立派なNO。

③「伝え方」は優しく、でも自分に正直に

→ 言葉は柔らかくても、本音にウソはつかない
例:「私はこう感じてるんだ」「私はこう思うけど、あなたはどう?」

自分を大切にすると、何が変わる?

  • 人間関係が“がんばらないと続かない”ものから、
     “自然体でいられる”関係に変わります
  • 他人の評価よりも、自分の感覚を信じられるようになります
  • 傷つかないようにするんじゃなくて、傷ついたときに自分を癒す力が育ちます

まとめ

自分を大切にするということは、
「自分を大切にしない関わり方」をやめることから始まります。

相手に優しくするのも素敵だけど、
まずは自分に対して“優しい言葉”“優しい態度”を忘れないでいてくださいね。